平織りは、縦横の織り糸が1本ずつが互いに交差する最も単純な織り方の布です。麻布は、質感の良さと発色の美しさから、古来より最も多く刺繍に使われます。クロスステッチの際には通常2目ずつ刺しますので、ブロック織りのアイーダなどに比べて目数を数えにくいですが、背景に布面を広く残すデザインの場合には、その美しさが引き立ちます。
図案集などで使われるスクエア・リネン(Square Linen)という名称は、縦横の織り糸が正確な正方形(Square)を成す麻布の意味ですので、クラッシー以外の下記布は、すべてスクエア・リネンです。
図案集などで使われるアイリッシュ・リネン(Irish Linen)という名称は、素材(アイルランド産の上質な麻)を指す名称であり、織り方や目数を示しているものではありません。下記の中から目数を合わせてお選びください。なお、Cork, Dublin, Cashel, Belfast これらは、いずれもアイルランドの街の名前をとって命名された布です。
130目前後を境界に、目数を数える刺繍に使われる布と目数を数えない刺繍に使われる布に大別されますが、目の粗い布に目数を数えずに刺す事もありますので、その分類は曖昧です。
織り糸が適度な間隔を空けて平織りになっていますので、あらゆるタイプの区限刺繍に用いられます(自由刺繍に使われる事もあります)。Ariosa Trento は、ネップ(節)の入った織り糸を使っていますので、布の表面に自然な変化が見られます。
経糸・緯糸各々数本づつが組になって交差する事によってブロックを形成し、そのブロックの四方に生じる隙間の穴を使って目を数えながら刺して行くタイプの刺繍布を
ブロック織り(Block Weave)と呼びます。この「アイーダ」「インデアンクロス」や、後述の「ジャバクロス」「オックスフォード」などがブロック織りの布です。
目数を数える際は、織り糸の本数では無く、ブロックの数で数えます。
「アイーダ」は、平行に並んだ4本の織り糸の内、中央の2本と外側の2本がそれぞれペアを組みながら経緯交差し、1つのブロックを構成します。日本でインデアンクロスと称される布はアイーダと同じ織り方です。Zweigart社のカタログには「アイーダは1907年に発明された」と記載されています。
アイーダと似ていますが、織り糸・織り方が異なります。例えば14アイーダの織り糸は1ブロック4本ですが、同じ目数のジャバクロス55の織り糸は7本です。織り糸が多いため糸は細く、アイーダより柔らかい布です。又、アイーダの場合、目が粗くなると織り糸も太くなりますが、ジャバクロスは糸の本数を増やす事でも調節していますので(ジャバクロス粗目は9本)目の粗い布でも柔らかさを保っています。クッションなど、肌に触れる作品にはこの布が適しています。
2本又は3本の織り糸がペアになってブロックを構成します。目数を数えずに刺す事もできますので、幅広い刺しゅうに用いられます。
Zweigart Oslo(2x2)は、ブロック間に適度な隙間があり、ハーダンガー刺しゅうに適した布ですが、廃番になりました。Osloの仕上げ工程を1段階省略した Zweigart Sulta Hardanger をご利用ください。Osloより少し固い仕上げですが、Osloと同じ織り方で、アメリカではハーダンガー向けの布として旧来より愛用されています。
国産の綿オックスフォード(2x2)はオスロ同様に適度な隙間のある布で、「2本オックス」の名称でハーダンガーやクロスステッチに親しまれていましたが、現在は一般向けには販売されていません。
一般的にキャンバス(Canvas)は帆布を指しますが、刺繍布でキャンバスとはニードルポイントやプチポアンの基布に用いられる目の粗い網戸の網のような布を指します。
スウェーデン刺しゅう(スエーデン刺しゅう)は布の織り糸を表面ですくって刺しますので、すくいやすい布であれば特に制約はありませんが、専用のスウェーデンクロス(スエーデンクロス)が多く使われます。
海外では「Band」ですが「バンド」と呼ぶと結ぶイメージが強い為、国内では「テープ」「リボン」という用語法が見られます。「リボン」ですと「リボン刺繍のリボン」と混同されますので、当店では「テープ」もしくは海外の用語法そのままに「アイーダ バンド」「リネン バンド」と呼んでいます。